行かないで、
行かないで、
置いて行かないで…
そう叫んだ時、同時に右手が前方に伸びた。
何処かに縋り付こうと、伸ばしたのだと思う。
何に掴まりたかったのだろう。
私の手は空を泳ぎ、当然のように何も掴めず
縋り付けず、泣きつけず、ただ無様に床に落下した……
1人、孤独の闇に施錠された檻に、顔面から放り投げられた痛み。
何処へ手を伸ばしても…何も届かない 空虚。
信じていた。
…信じていた。
“ 例え全てが敵に回ろうとも 世界がお前を1人にしても… ”
“ 俺だけは、永遠にお前の傍にいる ”
“ 俺だけは お前の味方だ… ”
信じていた。
そして、その最後の拠り所にも、 背中を向けられた…
もう… 生きることに、疲れたのだろう。
期待も、希望も、願望も、何もかもが意味を持たないと知った…
例えば男に跨られようとも、何も興味が無い。
犯したければ犯せ、
殺したいのなら殺せ、
その程度の感覚でしかない…
私の生など、無に等しい―――…
そして俺は泣いていた。
そう言って人形の顔をしているお前を見て、泣いていた…
何故泣くのかと、お前は目線だけをこちらに寄越した。
俺が殺した
期待も希望も願望も全てを失ったお前が、
俺には――― 辛すぎて……
[Infection]
【000:It seems to be the madder】
「ハァッ―――、ハァッ…!!」 −
逃げろ +
逃げねば…
逃げねば ――――!
何処へ? +
何処へ逃げる? +
「いたぞ、アレだ!」
逃げねば −
逃げね…ば……
「逃がすな!」
逃げなくては―――…!!